COLUMN
カスケードとは「階段状に水の落ちる滝のこと」と辞書に書かれています。
「カスケード理論」は、高タンパク、メガビタミンの必要性を分かりやすく説明するための理論です。
たくさんある階段の一つひとつはビタミンが必要とされる代謝や生理作用で、流れる水はビタミンだと仮定しました。ビタミンが充分になければ下の段まで届かずに不足してしまいます。その結果、どのような体調の変化があらわれるかは一人ひとり違いますが、それは階段の順序とビタミンの摂取量の違いです。
三石巌はその違いを個体差と考え、それを体質上の弱点としました。あなたの弱点をカバーするためには、たくさんある階段の一番下までビタミンが流れ落ちなければなりません。チョロチョロと流れるのではなく、下まで勢いよく流れるためには、メガビタミンでなければ難しいと三石巌は仮定しました。
そして、代謝の順序(階段の順序)は、酵素と協同因子との確率的親和力の大きさの順序と同じだと考えました。
カスケード理論は、遺伝情報による確率的親和力の個体差を説明する理論なのです。
ビタミンの必要量にも階段の順序にも個体差があり、一人ひとり違います。
インターフェロンはウイルスに感染したときに、生体を守るために体内でつくられるタンパク質で、ビタミンCはインターフェロン合成の協同因子です。風邪はウイルス感染により発症しますから、よく風邪をひくのならインターフェロンの階段はかなり下の方にあると考えられます。
反対に、あまり風邪をひかないのなら、インターフェロンの階段は上の方にあると考えることができます。

そこで、風邪をひきやすいヒトは、個体差により階段の下の方までビタミンCが流れにくいと仮定しました。インターフェロンはガン細胞のような異形細胞と戦っているナチュラルキラー細胞を賦活する作用も持ち合わせています。
結合組織の主成分はコラーゲンです。コラーゲンは繊維状のタンパク質が三つ編みになっていて、ここでもビタミンCが協同因子として関わっています。つまり、ビタミンCが不足すれば丈夫なアミノ酸の三つ編みを作ることができません。丈夫な三つ編みで構成されていない血管壁は脆くて破れやすいのです。骨の主成分であるだけでなく、皮膚にも内臓にも椎間板にも角膜にも、至る所に存在しています。
しかも、ビタミンCのような水溶性ビタミンの必要量は1〜100、つまり、1摂取すれば十分なヒトと、100摂取しなければ不足するヒトがいることになります。それを個体差といいます。
自分はどのくらいのビタミンが必要なのかを調べることはできません。そこでメガビタミンを推奨しているのが、ポーリング博士や三石巌なのです。

父は、タンパク質でできた階段には、タンパク質でできた水車が各段に付いていて、流れるビタミンの量をコントロールしていると仮定しました。つまり、メガビタミンはタンパク質が不足していては成り立ちません。タンパク質だけでも共同因子としてのビタミンCやビタミンB群だけでも、丈夫なアミノ酸の三つ編みはできないという考えに基づいています。が、三石理論の基本です。
ビタミンだけをスポーツクラブやネットでもプロテインやビタミンは、簡単に手に入りますが、良質なタンパク質と共同因子を一緒に毎日欠かさず摂っていてもヒトフードを摂らなければ片手落ちになってしまうことが、ご理解いただけたと思います。
口から入ったビタミンCは腸で吸収されて、血液に入ります。血中のビタミンCは副腎、脳下垂体、白血球などに取り込まれ、それぞれの役割を果たします。
ビタミンCの働きには、どのようなものがあるでしょうか?
新型コロナウイルスに対抗するのではとインターフェロンが注目され、ビタミンCの有効性に関する記事もありました。単純に考えれば、インターフェロン合成のカスケードが一番下にあれば、新型コロナウイルスに感染しやすいのかもしれません。
ヒトはビタミンCを体内で合成することはできません。カスケードの下まで充分に行き渡るほどの全てのビタミンを食事から摂ることは難しく、例えばビタミンC1gはレモンなら約50個、苺なら約100個になります。また、ビタミンCはインターフェロンの合成によってウイルスに対抗するだけでなく、ぎっくり腰やむち打ち症、ガンにも対抗できることがわかっています。
ガン細胞や細菌は、粘質多糖体を溶かすことによって結合組織に穴を開け、そこから侵入しますが、この酵素を抑制してガンの浸潤や細菌の感染を防ぐのもビタミンCの働きによります。
また、魚を焼くとジメチルアミンが発生します。ハムやソーセージの発色剤として使われている亜硝酸塩は野菜にも含まれています。この二つが酸性の環境で結合するとジメチルニトロソアミンという最強の発ガン物質になりますが、ビタミンCはその結合を阻害してくれます。
このほかにもビタミンCが協同因子となる代謝には、「コラーゲン合成」「副腎皮質ホルモン合成」「チトクロームP450(薬物代謝を担う酵素)合成」「免疫グロブリン(抗体機能を持つタンパク質)合成」「コレステロール分解」「リパーゼ(中性脂肪を分解する酵素)活性化」「グリコーゲン(エネルギー代謝に関与)合成」「ブドウ糖吸収抑制」「一酸化炭素の毒性緩和」「汚染物質の毒性緩和」「重金属の毒性緩和」「知能指数上昇」「統合失調症やうつ病の改善」「排卵促進」「活性酸素の除去」など、ビタミンCの働きは多種多様で数えきれません。
このように様々な役割を全てのビタミンが持っていることになります。そして、他の全てのビタミンのカスケードの構造もタンパク質でできていることを忘れないで欲しいのです。
『パーフェクト・コーディング理論』と『カスケード理論』という三石理論の二つを結ぶのが『ビタミン・ミネラルの位置づけ』です。前号の『確率的親和力』の説明で書いたように、酵素反応つまり代謝は約3000ほどあり、その酵素のほとんどが協同因子を必要としています。
つまり、ビタミン・ミネラルなどの協同因子なしでは実行できないということになります。
副腎皮質ホルモンを作る細胞、インシュリンを作る細胞、神経伝達物質を作る細胞というように、作る物質によって原料も化学反応も違い、要求する栄養素も違うと考えなければなりません。共通しているのは、エネルギー代謝とDNAによるコーディングです。
従来の栄養学では脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられています。それは脂溶性だから蓄積される、水溶性だから尿から排出される、というそれぞれのビタミンの科学的な物差しでの分類です。
私たちが知りたいのは、口から入った栄養が身体のどこでどのように働くのか、ということではありませんか?
健康の自主管理に役に立つ身体との関係による分類ではありませんか?
酵素の大部分は、協同因子の助けがあって初めて代謝が可能になります。それぞれの代謝の協同因子(ビタミン・ミネラル)を図で表わしてみました。

こんなにたくさんのビタミンやミネラルが各細胞の活動に必須ということになります。
「ひとつでも不足すれば、健康レベルの低下は覚悟して欲しい。〝ビタミン・ミネラルの位置づけ〞は、ある一つの化学反応が、全身に起きるものなのか、局所的に起きるものなのかという点に着目した」
「カスケードの一番下まで滝が流れるように、十分に大量のビタミンを摂るという方法こそがメガビタミンです。そして、これこそが生命のロウソクを太くする、ただひとつの方法なのです」と、三石巌は書いています。
私の拙い説明が少しでも皆様の健康自主管理のお役に立てましたら幸いです。
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一般社団法人 三石理論研究所 所長 笹木 多恵子