COLUMN
話をまた健康レベルにもどしましょう。青春時代の健康レベル、つまり人生最高の健康レベルは、どこからきたと考えるべきでしょうか。
その時代に、身体は完成しました。成人式はそのセレモニーであったはずです。このとき、親ゆずりの遺伝子はフル活動しています。働き手である細胞も、全部が勢揃いの状態です。そしてこのことが、人生最高の健康レベルの根拠となります。
お互いの経験にあるように、20歳前後には、食欲旺盛が普通です。それはつまり、栄養物質の補給が、かなりよいことを意味します。これもまた、遺伝子がフルに活動するために必要な条件なのです。
人間の身体は、きわめて精密な化学工場に例えることができます。そこでは、数百万の化学反応が起きています。脂肪酸やブドウ糖からエネルギーを作りだすとか、そのエネルギーで電気をおこして神経伝達を実現するとか、消化酵素を作るとか、筋肉を収縮させるとか、生体の化学反応は多種多様です。
《代謝》という言葉があるのをご存じでしょう。これは、生体の化学反応を指す言葉です。
これもまたご存じの通り、代謝は37℃程度の低い温度で行われます。米から熱をとりだそうとしたら、普通なら、それに火をつけて燃やさなければなりません。ところが、口からはいった米は、37℃という低温で、燃えて熱をだすのです。
このように、化学反応が低温で進行するのは、そこに《酵素》があって、反応を媒介するためです。すべての代謝は、酵素のおかげで低い温度で起こるのです。
そこで遺伝子の話になるのですが、ビードルとテータムの両人によって、「一遺伝子一酵素」の法則が提唱されました。一つ一つの遺伝子が、それぞれ一つ一つの酵素に対応する、という法則がこれです。
一遺伝子一酵素の法則は、私たちに、親から子へと伝えられる遺伝子の正体が、酵素の設計図であって、それ以外のものではないことを教えてくれました。考えれば考えるほど、これは驚天動地ともいうべき画期的な出来事でした。人の子が人の子である所以は、親が子に、人間特有の酵素の設計図のセットを与えたことでしかないのです。カエルの子がカエルの子である所以は、親から子に、カエル特有の酵素の設計図を与えたことでしかないのです。カエルの親は、あのグロテスクな姿や、単調な鳴き声を子に伝えたには違いありませんが、それを直接にではなく、酵素の設計図を通して間接に伝えたということです。
そういうことがわかってみれば、私たちはせっかく親がくれたもの、すなわち酵素の設計図をフルに活用しなければ申し訳ないことになるでしょう。
酵素を料理とすれば、酵素の設計図は、料理の本にあたります。親は子に、料理を与えたのではなく、料理の本を与えたのです。料理の本があるからこそ、何回でも同じ料理がつくれるわけです。それはつまり、ある代謝が必要になれば、それを媒介する酵素が作られるということです。ある代謝がほしいという情報が届いたとき、それに応じて酵素を作る、というような過程を《フィードバック》と言います。
すべての酵素は、フィードバックによって作られます。ということは、すべての代謝が必要に応じて起こることを意味しているのです。
さて、料理について考えてみましょう。正確につくろうとすれば、料理の本を見るにかぎります。しかし、いくら本があっても、料理の材料がなかったら話になりません。それと同じことは、人間の身体についても言えるのです。
そこで、酵素の材料は何か、という問題が起きてきます。
あっさり言ってしまえば、酵素の材料はタンパク質です。それがわかれば、私たちは、親から教わったことをやりとげるために、どうしてもタンパク質をたっぷり摂らなければならないという結論にぶつかります。どんなに立派な頭や身体を親からもらっていても、タンパク質が足りなければ酵素が満足に作られないわけでしょう。それでは代謝がうまくゆくはずはないのですから、健康レベルの高いことは望めないでしょう。
身体が化学工場であるとすれば、健康レベルが高いことは、工場のフル操業のようなものにあたります。そこで、フル操業のための条件として、私たちはタンパク質を見直さなければならないのです。
遺伝子という料理の本があり、タンパク質という料理の材料があって、初めて、きちんとした料理が客の数だけそろうというものです。
高い健康レベルは代謝のフル回転から出てきます。そして、代謝のフル回転は高タンパク食から出てきます。タンパク質の評価を誤ったら、高い健康レベルはありえません。自然食・玄米食のたぐいのものが、高い健康レベルをもたらさないという事実は、このようにして説明されるのです。
ここでもう一度まえのことをふり返ってみれば、活性酸素や遊離基についても考慮する必要のあることに気付きます。そうすれば、高タンパク食と活性酸素除去物質と遊離基捕捉物質の三つのものが揃うことが、高い健康レベルを保証する条件となるでしょう。
三石巌著『知らないと損する健康100の知恵』P34~38より