COLUMN
タンパク質をたっぷり摂ることが、酵素の材料を確保する道であることを、私たちは知りました。活性酸素や遊離基(フリーラジカル)を捕まえることが、細胞の数が減るのを防ぐ道であることを、私たちは知りました。こういうものを重視するだけで、高い健康レベルが保てるかというと、そうではないのです。見落とした問題点が、少なくとも二つはあるのです。
まず第一は、酵素というものが、タンパク部分と非タンパク部分と、二つの要素を持つものが多いということです。ここまで私は、酵素はタンパク質だといってきました。これは、正確にいえば、酵素のタンパク部分の話でしかありませんでした。遺伝子に記されているのは、酵素そのものではなく、酵素のタンパク部分であったのです。これを「主酵素」といいます。ついでにいえば、酵素の非タンパク部分を、「助酵素」または「補酵素」といいます。酵素の多くは、主酵素と補酵素と、二つの部分を持っているということなのです。
主酵素の設計図は、遺伝子にありました。しかし、補酵素の設計図は遺伝子にはありません。それは、タンパク質をたっぷりとれば主酵素は作れるけれど、補酵素の方はどうにもならないということです。それはつまり、補酵素の製法を私たちの体は知らないのだから、それは外からそのままの形で摂らなければならないことを意味します。
そういうことになると、補酵素とは何だ、という問題が出てくることにならざるをえません。補酵素とは何なのでしょうか。
私たちの常識のなかに、ビタミンやミネラルが、栄養素だという捉え方があります。この本でもすでに、ビタミンのあるものが、活性酸素除去や遊離基捕捉に働いていることを書きました。今度は、ビタミンに補酵素作用のあることを強調する段階になりました。ビタミンはミネラルとともに、補酵素として、代謝の鍵を握る栄養素なのです。このことから私たちは、 万一ビタミンが不足したら、タンパク質がいくらたくさんあっても、酵素が作れず、したがって、代謝のフル回転ができず、低い健康レベルに甘んじなければならないことを知るのです。
むろん、ビタミンが十分にあっても、タンパク質が不足なら、酵素は作れない訳で、これまた低い健康レベルにつながってくるわけです。
ここまでのことを総括すると、高い健康レベルのための条件が、高タンパク食・活性酸素除去物質、遊離基捕捉物質、ビタミンの四者の補給にあるということになるでしょう。
話はこんがらがってくるかもしれませんが、主酵素については、ややこしい問題がからんでいます。
まず、主酵素はタンパク質ですが、それは糸くずを丸めたような「球状タンパク」の形をしています。ところがこれは、一個では役に立たないのが普通なのです。ということは、球状タンパクが、二個、四個、六個などのかたまりを作って初めて、補酵素との結合ができるようになるということです。このように球状タンパクがいくつか集まったかたまりを「オリゴマータンパク」といいます。オリゴマータンパクが作れなければ、いくら遺伝子が球状タンパクを作っても、それが主酵素として機能しないことになるのです。
そういうわけで、球状タンパクがオリゴマータンパクを作ってくれなかったら、大変なことになります。高い健康レベルを手に入れるための条件は、ここにもあったのです。
球状タンパクがオリゴマーになるためには、ということは、球状タンパクが集まって結合するためには、環境が微アルカリ性でなければなりません。血液はアルカリ性でなければならないとか、食品はアルカリ性でなければならないとか、いろいろな人がいろいろにいうことを、皆さんはお聞き及びのことかと思います。それは、環境が微アルカリ性でないと、主酵素が作れないということに他なりません。
血液などの体液をアルカリ性に保つものは、カルシウムでありカルシウムイオンです。だから、血中カルシウムイオン濃度を高めることも、高い健康レベルのための条件ということになってきます。それは、カルシウムを摂ることであり、それといっしょにビタミンKを摂ることなのです。
球状タンパクがオリゴマーを作ることを妨害する因子としては、重金属があり、洗剤があります。こういういわゆる汚染物質、公害物質も、健康レベルの低下の原因になるのです。これは、常識とぴたり一致することではありますまいか。
生卵を割ってみると、白身は透明です。これが受精卵ならば、割るまえのものを適温にして やれば、やがてひよこがかえるでしょう。しかしもしこれを、半熟か何かにしてから温めたとしたら、ひよこはかえりません。生卵のとき、そこにあったタンパク質は全部が、球状の酵素だったのです。そして、それは加熱されれば、球状でなくなります。つまり、酵素作用は失われます。だから、ひよこがかえらないのです。このとき、タンパク質の変性があったということになります。
球状タンパクというものは、容易に変性します。活性酸素がきても、遊離基がきても、過酸化脂質がきても、熱が加えられても変性を起こすのです。そしてそれは、酵素活性をなくしてしまいます。ということは、代謝が阻害されるということで、細胞数の減少とまではいかないにしても、健康レベルの低下を招くことは、いうまでもありますまい。
そこで、酵素活性保全の面から健康レベルを高めることを考えると、活性酸素除去物質と遊離基捕捉物質とに注目せざるをえなくなります。ここで、活性酸素除去物質と遊離基捕捉物質とが、大幅にダブっているという事実を見逃すわけにいきません。このダブリの親玉は、アルファトコフェロールです。ビタミンEの老化防止、ないし若返りの作用がよくいわれるのは、まさにこの理由によるのです。
ビタミンEには8種のものがあります。アルファ、ベータ、ガンマ、デルタという具合です。そのなかで、抜群に有効なのが、アルファトコフェロールといわれるものです。このものはとくに小麦胚芽油に多く含まれています。小麦胚芽油がビタミンEの別名のように受取られているのは、そのような理由によるのです。
近年、ベータ、ガンマ、デルタなどをアルファに転換する技術が開発されました。それで、市販のアルファトコフェロールには、小麦胚芽油と無関係のものが多く見られるようになりました。
三石巌著『知らないと損する健康100の知恵』P38~44より