血糖値の急上昇を防ぐためのポイント4つ|血糖値スパイクとは
健康診断で血糖値の高さを指摘されたり多少の自覚症状があったりしても、つい楽観的に捉えてしまう人は珍しくありません。しかし、高血糖は慢性化することで糖尿病などの病気を誘発する恐れがあるため、早めの対処が推奨されます。特に食後高血糖や血糖値スパイクは普段の血糖値に問題がない人でも起こしやすい上に、気づきにくいため注意が必要です。
当記事では、血糖値・食後高血糖・血糖値スパイクの概要と、血糖値の急上昇を防ぐためのポイントを解説します。
そもそも「血糖値」とは?
血糖値とは、血液中に含まれているブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。
ブドウ糖は、食べ物に含まれる砂糖や炭水化物などの糖質が分解され消化・吸収する過程で生じ、血液中に取り込まれます。そのため健康に問題がない人であっても、食事の前後で血糖値は変動します。通常の食生活を送る上では、脳のエネルギー源として利用される唯一の物質であり、人が生きる上で欠かすことができません。
健康な人の体内では、食事や運動によって体内の血糖値が変動しても、膵臓から分泌されるインスリンやグルカゴンの働きによって一定の値を保つことができます。何らかの理由で血糖値が高いまま下がらなくなる状態を高血糖、必要以上に低くなる状態を低血糖と呼びます。
血糖値が急上昇?食後高血糖と血糖値スパイクとは
食後高血糖とは、食後2時間以上経過しても血糖値が高い状態です。
健康な人であっても食事をすれば血糖値が上昇しますが、あくまでも一時的なものにすぎません。通常、食事を始めればインスリンの分泌が始まり、食後2時間もあれば血糖値は正常値に戻ります。しかし、インスリン分泌量が不足したり働きが不十分だったりすると、2時間以上経ってもブドウ糖の処理が終わらず血糖値が平常値に下がりません。この状態を食後高血糖と呼びます。
血糖値スパイクとは、食後1時間程度の間に血糖値が急激に上昇し140mg/dL以上の値を示した後、短時間で急激に降下する状態です。
健康な人が適量の糖分をとる分には、ブドウ糖が吸収され血糖値の上昇が始まると同時に適切な量のインスリンが分泌されるため、2時間程度で処理し切ることができます。しかし、過剰な糖質摂取やインスリンの分泌量不足が起こると、吸収したブドウ糖を処理し切れません。
細胞に取り込まれなかったブドウ糖が血液中に滞留し続けると、血糖値が必要以上に上昇する事態を招きます。すると今度は、大量のインスリンが分泌され一気に血液中のブドウ糖を処理するため、血糖値は急激に降下します。このような血糖値の大幅な上昇・下降が短時間で起こる状態が、血糖値スパイクです。
食後高血糖・血糖値スパイクのリスク
食後高血糖状態が長く続く人は、生活習慣病をはじめとした下記の病気を発症する可能性があります。
- 糖尿病(糖尿病予備群)
- 動脈硬化
- 血管障害
- 脳卒中
- 心筋梗塞
血糖値スパイクが頻発する人は、下記の病気リスクが高まります。
- 動脈硬化
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 認知症
- ガン
また、血糖値スパイクの場合、病気とまで至らなくとも下記のような弊害が起こるケースが認められるため注意が必要です。
- 食後の強烈な眠気
- 意識低下
- ふるえ
- 動悸
- 頭痛
- 吐き気
いずれも長期間放置すればリスクが高まります。可能な限り早い段階で血糖値の異常性に気づき、対処することが重要です。
血糖値スパイクに気づくためにはどうしたらいい?
血糖値スパイクのリスクを調べる方法は、医療機関での検査と簡易のセルフチェックの2つが挙げられます。
【医療機関で受けられる検査の例】
- 自己血糖測定(SMBG)
- 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
- 持続グルコースモニタリング(CGM)
- フラッシュグルコースモニタリング(FGM)
また、下記のリストで当てはまる項目が多いほど、血糖値スパイクのリスクが高くなります。
【簡易セルフチェックリスト】
- 甘いものをとる機会が多い
- 1日2食以下の日が多い
- 早食い・大食いの傾向にある
- 炭水化物や一皿料理が多い
- 野菜が苦手であまり食べない
- あまり自炊をしない
- 大量の飲酒習慣がある
- 食後に強い眠気や倦怠感を感じる
- 食後は不機嫌になりやすい
- 食後2時間以内に就寝する
- 睡眠不足の日が多い
- 運動習慣がない
- 移動はもっぱら車を使う
- ストレスが多いと感じる
- 喫煙者である
食後高血糖や血糖値スパイクを防ぐためのポイント4つ
食後高血糖や血糖値スパイクは食後1~2時間程度の短時間に起こるため、一般的な健康診断では見逃されやすい症状です。簡易検査キットの中には通販で購入できる測定器もあり、薬局などでは血糖値の簡易検査を実施するところもあります。医療機関を受診することが確実とはいえ、気になる場合は自分自身でも測定してみるとよいでしょう。
ただ、病気の発症には至っていなくとも、早いうちから予防に動くことは大切です。ここでは、食後高血糖や血糖値スパイクを防ぐためのポイントを4つ解説します。
低GI食品・高GI食品を意識して食事をとる
同じ時間に同じ量の食事をとる場合でも、GI値が低い食品を優先して選んだほうが食後高血糖や血糖値スパイクの予防につながります。「GI値」とはグリセミック・インデックスの略であり、食後に血糖値がどのくらい上昇するかを食品ごとに示した数値です。
GI値が高くなるほど糖の吸収率がよくなり、反対にGI値が低ければ低いほど糖の吸収が穏やかになります。糖の吸収に時間がかかればインスリンの分泌が追いつきやすくなるため、血糖値の急激な上昇を抑えられるでしょう。
一般的に、お菓子やパンなど糖質が多い食品は高GI値食品、きのこや野菜などは低GI値食品に分類されます。数値としては55以下が低GI値食品、70以上が高GI値食品です。
食べる順番に注意する
基本的に、食事で取り込まれた食べ物は入ってきた順に消化・吸収が始まります。そのため、血糖値が上がりにくいGI値食品からゆっくりとよく噛んで食べれば、食後高血糖や血糖値スパイクのリスクを下げることが可能です。
最初に野菜・海藻類・きのこ類などの食物繊維が豊富で糖質が少ない食材、次に大豆製品・肉類・魚介類などのタンパク質を主成分とした食材を選びましょう。食物繊維やタンパク質・脂質といった栄養素は食後血糖値上昇が少ないだけでなく、糖質の吸収を穏やかにする効果も期待できます。
野菜の中でも糖質が多い芋類やかぼちゃなどは、ご飯やパンなどの炭水化物と一緒に最後に食べることがポイントです。懐石料理やフルコースのように「副菜・主菜・主食の順に食べる」と覚えておくとよいでしょう。
3食しっかりと食べる
毎日決まった時間に1日3食しっかりと食べることが、血糖値ケアにつながります。忙しかったり体重が気になったりすると、つい食事を抜くことで時間やカロリーを調整しようとする人は珍しくありません。しかし空腹時間が長く続くと、次に食事をした後に血糖値スパイクを起こしやすくなることが実験により明らかとなっています。
出典:J-STAGE「空腹時血糖異常に影響する因子に関するコホート研究」
絶食後の食事で血糖値の急上昇を起こしやすくなるのは、一度にドカ食いする場合だけでなく、1日の総カロリー摂取量が同じ場合でも発生する現象です。これは長時間空腹が続くと膵臓の細胞がインスリンを分泌する役割を忘れ、機能回復に時間がかかるためだと言われています。
食後に軽い運動をする
食後あまり間を空けず身体を軽く動かすと、血糖値の急上昇を抑えられます。食後に血糖値が上昇するのは、消化・吸収されたブドウ糖が血液中に増えて処理が追いつかないためです。
食後15分程度は胃腸の動きが活発になり全身の血液が集中することで、糖質の消化・吸収が進みます。このときに軽く運動をすると、胃腸に集まっていた血液が手足にも分配され、糖を消化・吸収する速度が低下します。
また、運動によって筋肉がエネルギーを必要とするため、エネルギー源となるブドウ糖の消費を促進することが可能です。運動の時間・強度としては、食後1時間以内・15分程度の有酸素運動が目安とされます。
まとめ
食材の多くには多少なりとも糖質が含まれているため、健康な人でも食後は血糖値が上昇します。食後2時間たっても血糖値が下がらない場合や、急激かつ大幅な上昇・降下が見られる場合は、食習慣の改善が必要です。
血糖値が高い状態を慢性化させないためにも、低GI食品を選んだり食べる順番に注意したりと、日頃から食事管理には気を使いましょう。なお、今回紹介した内容はあくまで一般的に言われている内容です。
体質や疾患・既往症によっても対応は異なるため、食後高血糖や血糖値スパイクの疑いがある場合は医療機関で検査を受け、医師の指示を仰ぐことが大切です。