脂肪は、炭水化物・タンパク質と並ぶ「エネルギー産生栄養素」のひとつで、生命を維持するうえで欠かせない重要な成分です。食事から摂取した脂質のうち、使われなかった分は中性脂肪として、皮下や内臓のまわりに蓄積されます。
脂肪は「太るもと」と誤解されがちですが、実際には次のような大切な働きを担っています。
●必要なときに使えるエネルギーを効率よく蓄える
●内臓を衝撃から守るクッションとして働く
●体温を保ち、寒さから身体を守る
●ホルモンや細胞膜の材料になる
脂肪は、必要なときにエネルギーとして使えるよう、体内に中性脂肪という形で蓄えられています。この脂肪の分解は、身体がエネルギーを必要としたときに始まります。
まず、ホルモンの働きにより、脂肪細胞に蓄えられていた中性脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解されます。脂肪酸は血液中に放出され、筋肉や肝臓などの細胞に運ばれます。そして細胞内のミトコンドリアでエネルギー(ATP)に変換され、身体の活動に利用されます。
リパーゼと胆汁の関係
脂肪は、膵臓から分泌される膵液に含まれる消化酵素「リパーゼ」によって分解されます。リパーゼは、脂肪を脂肪酸とモノグリセリドに分解する働きを持っています。
しかし、脂肪は水に溶けにくいため、そのままではリパーゼが効率よく作用できません。そこで重要な役割を果たすのが、胆のうから分泌される「胆汁」です。
胆汁に含まれる「胆汁酸」には界面活性作用があり、脂肪を細かい粒(エマルジョン)に分散させることで表面積を増やし、リパーゼが働きやすい状態にします。この現象を「乳化」といい、これによってリパーゼが脂肪に作用しやすくなります。
脂肪酸
脂肪が分解されると、「脂肪酸」と「グリセロール」に分かれます。
分解された脂肪酸は、血液中で「アルブミン」というタンパク質に結合し、筋肉や肝臓などの細胞へ運ばれます。
細胞に取り込まれた脂肪酸は、ミトコンドリア(エネルギー産生工場)に送り込まれ、「β酸化」という過程で分解されます。ここで生じた「アセチルCoA」は、TCA回路(クエン酸回路)や電子伝達系を経て、私たちの活動に必要なATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーに変換されます。
グリセロール(グリセリン)
グリセロールは水に溶けやすい性質を持ち、血液中に吸収された後、主に肝臓で糖(グルコース)やエネルギー源として利用されます。また、皮膚の保湿成分としての働きもあり、化粧品などにも使われています。
脂肪が分解される
脂肪は、小腸で膵液に含まれる消化酵素「リパーゼ」と、胆のうから分泌される「胆汁酸」の働きによって分解されます。
このとき脂肪は、「脂肪酸」と「グリセロール」に分かれます。
脂肪酸は、血液中を流れ、筋肉や肝臓などの細胞に運ばれ、ミトコンドリアでATP(エネルギー)として利用されます。
グリセロールは、肝臓に送られ、糖(グルコース)やエネルギー源として再利用されます。
中性脂肪に再合成される
分解された「脂肪酸」と「グリセロール」は、小腸で吸収されたあと、腸管の細胞内で再び中性脂肪に合成されます。
その後、リポタンパク質(キロミクロン)に包まれて、リンパ管や血液中を通じて体内を巡ります。
中性脂肪は、肝臓や脂肪組織、筋肉などに一時的に蓄えられるか、必要に応じて再びエネルギー源として使われます。
リンパ管に吸収される
キロミクロンは、リンパ管に取り込まれ、リンパ液に乗って全身に運ばれます。最終的には血液中に放出され、筋肉や肝臓、脂肪組織などに届き、エネルギーとして使われるか、再び貯蔵されます。
この過程では、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)も一緒に吸収されるため、脂肪の吸収がうまくいかないと、これらのビタミンが不足するおそれがあります。
脂肪は、エネルギー源・体温保持・臓器保護・ホルモン合成などに関わる、生命にとって重要な栄養素です。体内に取り込まれた脂肪は、膵液に含まれる消化酵素「リパーゼ」と、胆汁中の「胆汁酸」の働きによって分解・吸収され、脂肪酸とグリセロールに分かれます。その後、それぞれが最終的にATP(エネルギー)へと変換され、身体の活動に使われます。
この一連の流れがスムーズに行われるためには、消化管や肝臓など、各器官の働きが正常であることが前提です。
消化管の壁はすべて「粘膜」で構成されており、栄養の消化・吸収はこの粘膜の状態に大きく左右されます。粘膜を丈夫に保つためには、良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(亜鉛・鉄・カルシウム・マグネシウムなど)が不可欠です。
これらの栄養素は、身体全体の代謝機能を正常化するためにも必要です。
また、粘膜の表面を覆っている「粘液」の分泌が低下すると、粘膜が乾燥し、バリア機能が低下します。ビタミンAは粘膜の材料となり、レシチンは粘液を粘膜に定着させる働きがあるため、これらの摂取も非常に重要です。
さらに、リパーゼをはじめとする体内の消化酵素は、すべてアミノ酸から合成される「タンパク質」です。タンパク質が不足すると酵素の合成が妨げられ、結果として栄養素の消化・吸収力が低下する恐れがあります。
つまり、良質タンパクとビタミン・ミネラルの摂取は、消化吸収の働きや胆汁の分泌を正常に保つだけではなく、身体全体の機能を整え、健康レベルを高めます。
脂肪は、エネルギー源や臓器保護、ホルモン合成などに関わる重要な栄養素です。体内では、膵液のリパーゼと胆汁酸によって分解・吸収され、脂肪酸とグリセロールに分かれ、最終的にエネルギーとして利用されます。
この一連の過程をスムーズに進めるには、消化管や肝臓などの機能が正常に保たれていることが前提です。とくに、栄養の消化・吸収を担う消化管の「粘膜」の健康は、その働きに直結します。粘膜を丈夫に保つためには、良質タンパクに加え、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルが欠かせません。
これらの栄養素は、身体全体の機能を整え、健康レベルを高めます。
その根拠となっているのが、分子栄養学(三石理論)です。「三石理論の実践ブック」では、その考え方を分かりやすく解説しています。