低血圧とは?症状・原因から対処法まで解説
高血圧が健康にさまざまなリスクを及ぼすことは、よく知られています。しかし、一方の低血圧はどのような症状が起こるのか、どれほどのリスクがあるのかを把握していないという人は意外と多いのではないでしょうか。
また、低血圧は高血圧に比べて危険性は比較的低いため、たとえ医師から低血圧気味と言われても特に重大さを感じず、今すぐ対処しようという気になかなかなれないというケースも多々あるでしょう。
しかし、低血圧は日々の生活に少し気を付けておくだけでも、その症状は和らぐ可能性があります。そこで今回は、低血圧の概要や原因とそれぞれの種類から、低血圧への対処法まで詳しく解説します。
低血圧とは|原因・種類も
低血圧について知る前に、まず「血圧とは何なのか」の理解は必須です。そもそも血圧とは、血管内の血液が有する圧力のことで、分かりやすく言うと「心臓から送り出された血液が全身へと流れる際に、血管の内側にかかる圧力」を指します。基本的に血圧は常に変動しており、心臓に近い血管ほど血圧は高く、手足など心臓から遠くなるほどその圧力は低くなることが特徴です。
また、血圧には「上の血圧(最高血圧)」と「下の血圧(最低血圧)」があります。
上の血圧 | 心臓が収縮し、最も強い力で血液を送り出そうとしているときの圧力 「収縮期血圧」とも呼ばれる |
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下の血圧 | 心臓が緩み、送り出した血液が心臓に戻ってくるときの圧力 「拡張期血圧」とも呼ばれる |
なお、血圧の単位は「mmHg(ミリメートルエイチジー)」で表されます。血圧正常値は一般的に120/80mmHg以下とされていますが、これは病院で血圧測定をした場合であり、家庭血圧では各5mmHg低い値が基準値となることも特徴です。
そして低血圧とは、上の血圧が100mmHg未満である状態を指します。
低血圧はその原因によって、一般的に4つの種類に分けられることが特徴です。ここからは、低血圧の4つの種類をそれぞれ紹介します。
本態性低血圧(一次性低血圧)
本態性低血圧(一次性低血圧)とは、特にはっきりとした原因がないにもかかわらず、慢性的な低血圧状態となるタイプです。低血圧と診断された人のほとんどがこの本態性低血圧(一次性低血圧)で、遺伝や体質が主な要因とされています。
本態性低血圧(一次性低血圧)の場合、本人が悩まされている自覚症状が特になければ病気とはみなされません。
起立性低血圧
起立性低血圧とは、普段は正常血圧であるにもかかわらず、横になっているまたは座っているところから突然立ち上がったり、身体を動かしたりしたときに血圧が急低下し、立ちくらみやめまいを起こすタイプです。このタイプは、突然身体に動作を起こすと血圧の調節がうまくできなくなり、下半身に蓄積された血液が心臓に戻りにくくなることが血圧低下の原因とされています。
しかし、起立性低血圧のすべてが血圧の調整によるものとは言えません。起立性低血圧には特発性のものと二次性のものがあり、高血圧の人でも起きる可能性があります。
起立性低血圧患者の中には、特に自律神経失調症によって低血圧状態を引き起こすケースも目立ちます。このように、何らかの隠れた疾患による影響の場合もあるため、立ち上がる際の立ちくらみやめまいが頻繁に起こる場合は精密検査を受けることが望ましいでしょう。
症候性低血圧(二次性低血圧)
症候性低血圧(二次性低血圧)は、遺伝的・体質的なものではなく、何らかの病気が原因で血圧が低くなるタイプです。主に心筋梗塞・心不全といった心臓の病気や末期がん、さらに大量出血や脱水など血液量の低下が要因となります。
原因となる病気が把握できている場合は、その原因疾患の根本的な治療を進めることとなりますが、特に自覚していない場合は精密検査などを受けて原因疾患を突き止める必要があります。
食事性低血圧(食後低血圧)
食事性低血圧(食後低血圧)とは、食後に限って、血圧が一時的かつ急激に低くなるタイプです。食べたものを消化するため胃に血流が集中してから、血液が心臓に戻りづらくなることによって低血圧状態が起こります。症状としては、食後の倦怠感・立ちくらみや失神、胃もたれや吐き気、眠気が特徴です。
食事性低血圧(食後低血圧)の場合は、一度の食事量を少なくし回数を増やすなどの調節をしたり、水分・塩分をバランスよく摂取したりすることが重要となります。
低血圧の症状
低血圧の種類によっても、主な症状はそれぞれ細かに異なるものの、基本的に低血圧状態となったときは下記のような症状が見られます。
◆低血圧による主な症状
- 立ちくらみ
- めまい
- 失神
- 頭痛
- 動悸
- 倦怠感
- 食欲不振
- 不眠
- 不安感
低血圧の代表的な症状が、立ちくらみやめまいです。症状がひどい場合は、失神をしてしまうケースもあります。また動悸や倦怠感もあり、疲れやすさも感じてしまうことが特徴で、朝起きるのがつらくなったり、起床から数時間は全身に血液が十分に供給されず生活に何らかの支障をきたしてしまったりするケースも少なくありません。
その他、低血圧によって食欲不振や不眠を引き起こす可能性もあり、慢性的な場合は不安感など精神的な影響を及ぼすおそれもあるでしょう。季節としては特に夏に生じることが多く、ひどい夏バテを引き起こしやすくもなります。
低血圧への対処法
低血圧は種類によって原因はさまざまで、いずれも明確な治療法があるわけではありません。しかし、日頃の生活スタイルに少し気を付けて生活改善をするだけでも、その症状が和らぐ可能性は少なからずあると言えるでしょう。
低血圧の状態・傾向にある場合は、生活習慣の中で、自分で実践できる対処法・対策法をコツコツと続けることがおすすめです。最後に、低血圧への対処法・低血圧の人が日常生活において注意するべきことを詳しく解説します。
日頃の生活を見直す
低血圧は、特に身体を動かしていなかった状態から急激に身体を動かすことで起こりやすくなります。立ちくらみやめまいにより倒れてしまったり、失神してしまったりすると思わぬけがのおそれもあるため、日頃の生活のしかたをなるべく見直すことが大切です。
- ゆっくりと立ち上がる
- 規則正しい生活を心がける
- 水分補給をしっかりと行う
- きちんと入浴する
特に、起立性低血圧の場合はゆっくりと立ち上がることを常に心がけましょう。立ち上がる途中で立ちくらみやめまいが起きたら、すぐに座るなどして思わぬけがを防ぐことも重要です。また、入浴は温熱作用により血行がよくなる可能性もあるため、日頃から入浴することをおすすめします。
食生活を改善する
食欲不振の症状もある低血圧の人は、食事が疎かになっている傾向にあります。しかし、栄養バランスのとれた食生活は血圧のほか、さまざまな健康状態によい影響を与える大事な要素となります。また、特に起立性低血圧の人は、体重の減少により低血圧が悪化するとも言われているため、なるべく食生活を見直して三食きちんと摂取するようにしましょう。
血圧を少しでも高めるためには、塩分やタンパク質が重要です。慢性的な低血圧となっている場合は、十分な塩分を摂取することを心がけましょう。ただし、大量摂取はかえって高血圧の危険性が高まるため、適切な量を摂取してください。
運動を習慣化する
低血圧の人は、手足などの末端部から血液が心臓にうまく戻らない状態が起こりやすくなっています。末端部の血液循環を促すためには筋肉収縮も作用するため、末端部の筋肉が鍛えられるような運動を習慣化することが大切です。
手先の血液循環を促すためには、手を握ったり開いたりを繰り返すとよいでしょう。また、足の血液循環を促すためには、「第2の心臓」とも呼ばれるふくらはぎが重要とされています。ふくらはぎの筋肉は、脚全体の血液循環を促すいわば「ポンプ」の役割を果たす重要な部分です。ふくらはぎの筋肉を鍛えるためには、ウォーキングや筋トレがよいでしょう。
なお、めまいや動悸といった症状があるときは、激しい運動を控えることがおすすめです。
まとめ
血圧とは、「心臓から送り出された血液が全身へと流れる際、血管の内側にかかる圧力のこと」で、mmHg(ミリメートルエイチジー)という単位で表されます。そして低血圧とは、最高血圧が100mmHg未満である状態を指します。
低血圧は原因によって、一般的に「本態性低血圧(一次性低血圧)」「起立性低血圧」「症候性低血圧(二次性低血圧)」「食事性低血圧(食後低血圧)」の4種類があり、それぞれ具体要因も異なることが特徴です。
また、低血圧を根本的に治す明確な治療方法は確立されていません。しかし、日頃の生活を見直したり、運動を習慣化したりすることで、症状が和らぐ可能性はあります。
なお、ここまで紹介した内容はあくまで一般的に言われている情報です。低血圧について不安を感じている場合は、医師に相談し適切な診断・指導を受けましょう。