タンパク質の役割
タンパク質は皮膚・筋肉・爪・毛髪・骨・血液・臓器など、私たちの身体を作るうえでなくてはならない材料です。加えて、代謝に必要な酵素やホルモンの合成、栄養素の運搬・貯蔵など生命の維持に欠かせません。タンパク質は私たちの健康を維持するために重要や役割を果たしています。
タンパク質には大豆などに含まれる植物性タンパク質と肉、魚、卵などに含まれる動物性タンパク質があります。タンパク質の良し悪しは含まれるアミノ酸の質と量で決まります。私たち人間にとって最も良質なタンパク質は卵です。
そのため、タンパク質を体内で効率的に働かせるためにはビタミン・ミネラルの存在が不可欠です。これらの栄養素は、日々の食事から意識して摂取することが大切です。
なぜタンパク質が必要か
タンパク質が不足すると下記のようなことが起こりやすくなります。
タンパク質は基本の栄養素であることから、不足すると広範囲に影響を及ぼします。
●代謝の低下(エネルギー不足)
・疲労、不眠
・血流低下
・冷え、肩こり
・むくみ
●組織(細胞)合成の低下・各組織の機能低下
・肌あれ
・胃腸機能の低下
・免疫細胞の低下(風邪、食中毒)
・貧血
・骨粗鬆症
●栄養素の体内利用効率の低下など
ビタミンやミネラルは、体内ではタンパク質と結合して、組織に運ばれてはじめて働くことができます。良質タンパクの不足があると、どんなに他の栄養素を摂取しても、その栄養素が働けない状況ができてしまいます。その結果、ビタミンやミネラルの不足を引き起こしやすくなります。
タンパク質を分解する消化酵素(タンパク分解酵素)は胃液、膵液、小腸壁から分泌される消化液に含まれています。
タンパク質は口腔内では変化せず、胃に入って強い酸である胃酸によってタンパク分解酵素の作用を受けやすい形に変えられます。その後、胃のタンパク分解酵素であるペプシンによってタンパク質をポリペプチドに分解し十二指腸へ送ります。
十二指腸では膵液に含まれるタンパク分解酵素であるトリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼなどにより、さらに短いペプチド、アミノ酸に分解されます。その後、短いペプチドは小腸のタンパク分解酵素であるペプチダーゼによってアミノ酸にまで分解され、小腸から血管内に取り込まれます。
胃での消化
胃の中に食べ物が入ってくると胃の蠕動運動が起こり、内容物を攪拌、混和します。胃液と混ざることにより内容物が細かく粥状になると内容物が十二指腸へ運ばれます。タンパク質はペプシンによってポリペプチドに分解されます。
小腸での分解
胃である程度分解された食べ物は、十二指腸さらには小腸へ送られます。ここでは、膵臓から分泌される膵液によって消化が行われます。膵液にはタンパク質を分解するための酵素であるトリプシンやキモトリプシンなどが含まれています。さらに小腸壁から分泌されるペプチダーゼによって、アミノ酸にまで分解されます。
アミノ酸への分解
タンパク質は20種類のアミノ酸が50個以上つながったものです。タンパク質がタンパク分解酵素により分解されるとアミノ酸が20〜50個つながったポリペプチド、2〜20個つながったオリゴペプチドになります。さらに分解されるとペプチドはアミノ酸になります。アミノ酸は小腸から吸収され体内で必要な10万種類ものタンパク質の合成に利用されます。
ペプシン
ペプシンは胃の中でタンパク質を分解する酵素の一種です。
ペプシンは、胃の粘膜にある主細胞(胃底腺の主細胞)で産生されます。ペプシンは不活性な前駆体であるペプシノーゲンとして分泌され、胃内の強酸性環境で胃酸(塩酸)と混ざることによって活性型のペプシンに変わります。ペプシンはタンパク質のペプチド結合を切断し、ポリペプチドに分解します。
トリプシン
トリプシンは膵液に含まれる消化酵素の一種です。
トリプシンは、膵臓で不活性な前駆体であるトリプシノーゲンとして合成され、膵液に含まれています。食物が十二指腸に到達すると、腸内のエンテロキナーゼという酵素によってトリプシノーゲンが活性化され、トリプシンになります。トリプシンは、胃である程度消化されたタンパク質をさらに分解し、オリゴペプチドやアミノ酸に変換します。
キモトリプシン
キモトリプシンは膵液に含まれる消化酵素の一種です。
キモトリプシンは不活性な前駆体であるキモトリプシノーゲンとして膵臓で合成されます。腸内でトリプシンによって活性化され、タンパク質をペプチドに分解します。キモトリプシンは特に芳香族アミノ酸に対して特異的に働きます。
内臓への負担に配慮し、健康的に摂取するように
タンパク質の摂取量が少ない方は急に摂取量を増やすと胃腸に負担がかかることがあります。タンパク質を消化するタンパク消化酵素もタンパク質からできており、タンパク質の摂取量が少ないときは少ない量しか分泌されていません。タンパク質の摂取量を増やしたい場合には、身体に負担がかからないように少しずつ増やしていただくことをおすすめします。
腸内環境を整えて、タンパク質の吸収をアップさせる
タンパク質が分解されてできたアミノ酸は小腸から吸収されるため、腸内環境が整っていないとどれだけタンパク質をたくさん摂取しても吸収することができません。
また、タンパク質を過剰に摂取すると腸内環境を乱す原因となることがありますので、注意が必要です。
カロリー管理を意識しつつ摂取する
食事のみで1日に必要なタンパク質の量(体重1kgに対し1g)を摂取しようと思うと肉、魚、卵などを大量に摂取しなければならず、カロリーオーバーになりかねません。
そのため、通常のお食事にプラスしてプロテインでタンパク質を補っていただくとカロリーオーバーを気にせず摂取することができます。
市販されているプロテインにより、摂取カロリーは異なりますので成分表示をご確認ください。
摂取するタイミングを工夫する
1日でタンパク質が必要ない時間はありません。
可能な限りタンパク質が不足する時間を作らないような摂取方法がおすすめです。
そのため、タンパク質の摂取ができない睡眠時間の前後(夕食と朝食)はしっかりと摂取されることをお勧めします。特に身体の作り替えは夜に行われますので、夕食時のタンパク質は不足のないように摂取していただくことが大切です。
良質なタンパク質を摂取する
タンパク質は、やみくもに摂取するよりも、必須アミノ酸をバランスよく含む良質なタンパク質を選んで摂取することが大切です。
20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は人間の体内で合成することができないため、食品から摂取する必要があり「必須アミノ酸」と呼ばれます。
必須アミノ酸をバランスよく含むタンパク質のことを良質タンパクと呼び、食品であれば卵が最も良質なタンパク質となります。
さらに、ビタミンの大量摂取や活性酸素を除去する物質(スカベンジャー)の摂取といった要素を意識することで、体内での効率的な働きが促進され、健康維持につながります。
分解酵素を含む食べ物を加熱しない
食品に含まれる酵素は加熱すると働きを失ってしまいます。そのため加熱しないで摂取することが大切です。しかし、酵素はタンパク質でできているため、胃の中に入ると多くの酵素が消化されやすい形に分解され、さらに十二指腸、小腸内で分解、吸収されてしまい、多くが酵素として働くことができないと言われています。
タンパク質は体内の様々な種類の消化酵素によってタンパク質からペプチド、アミノ酸に分解され、小腸で吸収されます。吸収されたアミノ酸は体内で必要となるタンパク質に再合成されて生命の維持に使われています。私たちの身体はタンパク質が基本となっており、タンパク質が不足すると身体の様々な部分に影響が及びます。
三石理論では「良質なタンパク質の摂取」「メガビタミンの摂取」「活性酸素の除去」の3つの柱を実践することで健康レベルを高く保つことができると考えております。
必要なタンパク質、ビタミン、ミネラルの量は個体差があり、状況によっても左右されます。日々、ご自身の身体と向き合い、必要な栄養素を摂取する健康自主管理の実践のために、まずは三石理論をご理解いただけますと幸いです。
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