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インタビュー

INTERVIEW
Vol.5

二度にわたる腰椎の圧迫骨折
寝たきり状態からの回復を支えたのは、多くの人の支援と三石理論だった

戸松 由美子 氏中里 辰徳 氏(理学療法士)

2021年、腰椎の圧迫骨折によって日常生活に支障をきたすどころか、ほとんど寝たきり状態を余儀なくされた戸松さん。体重は15kg減り、前向きな気持ちも失いかけていた中、三石理論と出会い、理学療法士である中里先生の献身的なリハビリも相まって目覚ましい回復を遂げました。そんなお二方に、当時の状態から元気を取り戻した現在までのお話、三石理論への想いを伺いました。

薄墨で大きな漢字を一文字書き、濃い墨で短いメッセージを添える『紫芳の字手紙』の認定講師として、講座や自身の教室、書籍の執筆と多忙な日々を送っていた戸松さんの身体に異変が起きたのは、2021年2月のことでした。講師としての活動、主婦としての家事、寝たきり状態となった義母の介護という激務の日々が、本人も気付かぬ間に心身に大きな負担をかけていたのです。

「2月のある朝、激痛でベッドから起き上がることができなくなってしまったんです。コロナ禍になってすぐ自宅で義母の介護が始まったのですが、医師から昼も夜も2時間おきに様子を見るように言われていたので、2年間ちゃんとした睡眠が取れていませんでした。
腰痛は仕方ないと思い、長いこと鎮痛剤を飲みながら介護を続けていてベッドから起き上がるのも辛かったのですが、湿布を貼り腰痛ベルトをして頑張っていたんです。
3月に義母をお風呂に入れている時に激痛を感じ、これはぎっくり腰ではないと思い主人の車で病院に行き、圧迫骨折していることがわかったんです。それも2月の時点で骨折していたのだろうと診断されました(戸松さん)」

さすがに自宅で介護を続けるのは無理との判断から、義母は施設に入所。戸松さんは痛み止めの薬を飲みながら仕事を続けていましたが、症状が良くなることはありませんでした。最も状態が悪化した5月には、ベッドから起き上がれず、通院することもできませんでした。食事は横になったままだし、痛みで食欲はなく、ほとんど栄養は摂れないうえに逆流性食道炎にもなってしまいました。

天井と壁しか見えない毎日で、どうなるのかと恐怖しかなかったそうです。自宅での療養は難しいと判断したご主人が病院を探し、入院を検討していた矢先、その病院内でクラスターが発生。「時間はかかるけれども、家で治そう」というご主人の言葉もあり、自宅での療養と通院を選択したそうです。体重は義母の介護を行う前に比べて15kgも減ってしまい、その状態が精神的にも大きく影響してしまったそうです。

そんな時、通院先の病院の待合室で、5年前に右肩を骨折した際にリハビリを担当してくれた理学療法士の中里先生と偶然の再会を果たしました。この5年ぶりの邂逅が戸松さんにとって大きな転機になったと言います。

以前とは、まるで別人のように…
心にも寄り添うリハビリテーションの開始

病院の待合室にいる戸松さんに気づき、声をかけたのは中里先生でしたが、本人かどうか半信半疑だったそうです。それぐらい戸松さんの姿は5年前とは別人のようだったのだとか。

「5年前にリハビリを担当した時の戸松さんは、とにかくエネルギッシュな方だったんです。右肩を骨折されたので字を書けない状態なのですが、『私、仕事がしたいんです。このままじゃ困るからなんとかして!』とプレッシャーをかけてくるほどで(笑)。ところが、待合室にいた戸松さんは、すっかり痩せてしまい、かつての覇気が感じられない、まるで別人のようでした。違う人かもしれないと思いながら声をかけてみたら、やはり戸松さんだったんです(中里先生)」

中里先生は、再会の様子をそう教えてくれました。一方、中里先生に声をかけられた戸松さんは、すがる思いで自分の状態を伝えたそうです。

「その時、本を広げていたのですが、中里先生のお顔が見えたので、『すごく不安なの。何かできることはない?』と伝えたんです。担当医からは、まだリハビリができる状態ではないと言われていたのですが、このままでは精神的にもたないと思い先生に訴えました。すると、その場で私の身体の状態を見て『中里が面倒を見ると言っているからリハビリを始めたいと先生に伝えてみてください』と言ってくださったんです。その通り、担当医にお伝えしたところ『じゃあ、中里くんに任せる』と認めてくださったんです(戸松さん)」

ところが、当時の戸松さんの状態はリハビリが行えるような状態ではなく、初めは呼吸することから指導していったのだとか。

「人間は、大きなショックを受けるとシャットダウン状態になってしまいます。内臓の動きも悪くなって、呼吸も浅くなり、代謝も落ち、気持ちも落ちてくるんです。あの時の戸松さんは、自分の身体の状態がわからない、この先どうなるかわからないという不安に駆られ、パニック状態にあったのだと思います。そこで、今の身体の状態と今後治っていく過程を詳しく説明し、安心して治療に臨めるようカウンセリングを行い、姿勢や身体の使い方をはじめ、深い呼吸ができるような指導からリハビリを進めていきました(中里先生)」

理学療法士も驚いた回復力
その要因の一つに三石理論があった

中里先生によるリハビリは、2021年の9月からスタート。当初は2週間に1回、呼吸法やゆっくり身体を動かす指導から始まったそうです。回復に向けて伴走してくれる心強い相手ができたことで、戸松さんの気持ちも少しずつ前向きになっていく中、食事や栄養の重要性を再認識し、友人に勧められた三石理論を実践するようになったのだとか。

「実は2020年に、友人から三石先生の書籍をご紹介いただいたんです。当時はいちばん忙しく仕事をしていた時期で、健康には気を付けてはいたけれども特に何かをするというわけでもなくて。食べ物の好き嫌いがないので必要な栄養は摂れていると思い込んでいたんです。それでも、いただいた本なので一生懸命読みましたけれど、ちょっと内容が難しくて、栄養って大事なのよね、というところで止まっていました。ところが圧迫骨折でひどい状態だった時に、その友人に『痛みで眠れない、食事もしていない』と話したところ、三石理論を改めて紹介してくださったんです。ちょうど中里先生のリハビリを受け始めたのと同じ頃のことでした(戸松さん)」

まだベッドで寝たまま少量の食事しか取れない状況でしたが、戸松さんは三石理論を実践するようになったそうです。

「一番ありがたかったのは、絶対にこれをしなくてはいけないということではなく、一人ひとり必要な栄養や摂取量は全く違うという考えのもと、自分のペースで実践できたことが、当時の私にとってはとても気が楽になりました。その後も三石理論を実践し、中里先生のリハビリを続けていく中で、2022年の春先ぐらいから身体の変化を感じるようになったんです。家でも少しずつ動けるようになってくると、ちょっとずつ食欲も出てきて、前よりも元気になってきているという実感がだんだん強くなっていきました(戸松さん)」

三石理論を実践し、リハビリを始めてから約半年。戸松さんの身体の変化を敏感に察知してくれたのは中里先生だったそうです。

「2月頃から見ていて明らかに変化を感じました。治療の中で内臓の動きなども見るのですが、そのあたりが一気に良くなってきたんです。そう言えば、何かやっていると聞いていたので『何をしているの?』と尋ねたところ、それが三石理論だったんです。同時に『これを読んで』と三石先生の本まで渡されました(笑)。ちょうど僕も栄養学の勉強を始めだした頃だったのですが、書籍を読んでいると分子栄養学という名称がいろんなところから出てくるんですよ。三石先生のことは存じ上げていなかったのですが、本を読んで『この人が分子栄養学を提唱した人なんだ』と初めて知ったんです。それならこの理論を実践することはすごく意味があるなと思いましたね(中里先生)」

中里先生にも「理論の実践を続けてみて」と言われたことで、戸松さんもさらに三石理論への信頼を高め、自信をもって実践できるようになったのだとか。

中里先生によるリハビリは施術だけではなく、戸松さんの心の健康も取り戻せるよう、時に叱咤激励することもあるなど、身体と心に寄り添うものだったそうです。

「いつも中里先生はリハビリの時に『ここまでできるようになったじゃない』と励ましてくださるのですが、身体の調子が前よりも少しだけ良くなってきた頃に『人に会いながら元気になる方がいいんじゃないですか』とおっしゃったんですね。気持ちが上向くことで身体の反応も変わるからと。当時は、まだ1時間ぐらいしか起きていられない状態だったので無理だと感じたのですが、先生の勧めもあって人に会うようになると、不思議なことに身体の調子が上向いていったんです。そして、夏ぐらいから短時間だけ教室を開くようになったのですが、生徒さんには『会うたびに元気になっている』と言っていただけて。何人かの方に三石理論を実践していることを伝えたら、皆さん『私もやってみたい』とおっしゃるんです。回復していく私の姿を見て、身体の健康レベルを上げていくための理論だと感じていただけたのでしょうね。実は中里先生もすでに三石理論の実践者なんですよ(戸松さん)」

理学療法士として、戸松さんと同じような状態の患者さんを何人もみてきた中里先生は、戸松さんの回復スピードに驚き、三石理論が有効であると感じたことから自分でも試してみようと思ったのだそうです。

「実際に日々の生活のなかでいくつか意識して実践してみたところ、やっぱり良いですよね。朝がすごい楽なんですよ。それで妻にも勧めたのですが、僕よりも圧倒的に効果が高くて。それまでは出かけるギリギリまで布団に入っているような感じで、朝動けない人だったんです。三石理論を実践するようになってからは、スッと布団から出て来られるようになりました。今では、むしろ妻の方が積極的に三石理論を実践しています(中里先生)」

現在では週に2回から3回、教室で『字手紙』の稽古を行えるまでに復活した戸松さんですが、圧迫骨折で身も心も苦しんだ1年間は今後の仕事への向き合い方や生き方を考える時間にもなったと言います。

「あのまま無理を続けて忙しい日々を送っていたなら、もっと大きなケガや病気になっていたかもしれないと思うんですね。それとともに実感したのは、食事からタンパク質やビタミンをしっかり摂るのはすごく難しいということでした。まだまだ完全に元の身体に戻ったわけではないですけれど、三石理論や中里先生、いろんな方に支えられて、ここまで健康を取り戻すことができました。これからは栄養をきちんと摂りながら、運動もして、生きがいとなるような仕事を少しさせていただきながら元気でいられたら良いかなと、考え方が変わりました(戸松さん)」

少し前まで寝たきりで身体を動かすこともできなかったとは思えないほど戸松さんの声には張りがあり、表情も生き生きとしています。本人の努力はもちろんのこと、ご家族や中里先生らの支援や叱咤激励が心身の健康を取り戻すサポート役を果たしたのは間違いありません。また戸松さんは、その大きな要因の一つに三石理論との出会いがあったと繰り返し伝えてくださいました。